実践! 離婚の戦術

離婚の戦術

 蓮沼式にいえば、離婚は戦争です。それ以外の何物でもありません。

 他の記事にもまとめてありますが、離婚に必要なのはその「意義・目的+大義名分」と、離婚前後の「生活戦略」だと申し上げました。
 これらを総合して考えて、あなたは今、離婚するメリットが充分にあり、かつ離婚に踏み切れるだけの材料が揃っていると言えるでしょうか? 逆に、離婚するデメリットがメリットを上回ってはいないでしょうか?
 気持ちばかり先走っても、離婚という戦争には勝てません。そして、勝てない戦争は被害だけを受け取ることになり、しかも長く続く恨みの始まりともなるのです。軽挙妄動は慎まねばなりません。

 それらを総合した上で、「離婚できる」といえる情況が整っているのであれば、ようやく次の段階、「離婚戦術」について考えることができます。
 戦略なき戦術は不毛ですが、戦術なき戦略もまた、絵に描いた餅に過ぎません。ではどうやって敵を打倒し、戦略を実現するのか。それはひとえに戦術にかかっているのです。

 離婚戦術において考えるべきことは、非常に多岐に渡ります。
 以下、概観していきましょう。

離婚の流れ

 離婚は、それを宣言した瞬間に、相手に強烈な打撃を与えます。
 戦争と同じで、激しい反応を惹き起こすものなのです。

 別れたい、というのは、相手にとっては「存在価値」「人格」の全否定と受け取られることもあるほどの衝撃です。あなたがいる人生より、あなたがいない人生の方が私には好ましい、ということですから、単に結婚しなかっただけという「消極的否定」ではなく、いなくなってくれという「積極的否定」です。
 まぁ、切り捨てられる側の自業自得ではありますが……しかし、夫からすれば、(それまでの自分の行いは棚に上げて)許しがたい裏切りに見えるのです。

 最初は驚き、次に落ち込み、最後には怒りが煮え滾る。そして、その段階に至ると、もうなんでもありの反撃が始まります。
 相手も弁護士を雇い、興信所を雇い、下手をするとコスト度外視で、とにかくあなたを苦しめるためだけに、あらゆる手段を投入してきます。
 極端な例では、他のところでも述べますが、自分の職場をやめた夫までいるのです。収入がなければ、配偶者への婚姻費用を払えませんから、ただただ離婚を希望する妻を兵糧攻めにするためだけに、仕事を放り出したのです。
 そんな状態で、何ヶ月も、悪くすると数年間にわたって争いを続けることになるのです。

 しかし、戦争の要諦は、速やかに目的を達することにあります。

 離婚には、決着がつく場面というものが、何箇所か存在します。
 協議離婚といって当事者の話し合いと同意だけで決着がつくものもあれば、裁判所の調停によるものもあり、それでもうまくいかない場合は、やむを得ず裁判にもつれ込むこともあります。

 理想的にはもちろん、協議離婚の段階で相手にこちらの希望する条件を飲ませ、速やかに離婚するべきです。戦争でいうなら、実際に軍事力を行使する前に、居並んだ兵力を見せ付けて屈服させるということです。
 ただ、相手の性格その他の条件によっては、それが難しい場合もあります。その場合は、とりあえず相手の重要拠点に空爆をしかけるなどして、戦力差を思い知らせる必要が出てきます。こちらの法的優位性を、調停委員を交えることで強調するのが、この段階です。
 それでも決着がつかなければ、もはや地上戦です。互いに大きな犠牲を払いながら、戦略目標を達成しようとするのです。具体的には裁判がこの段階に相当します。
 実際に裁判になった場合でも、裁判官は和解案を提示してきます。互いの消耗をある程度のところまでにとどめて、終戦に至らせるための一つの提案です。しかし、これが飲まれなければ、いよいよ判決です。
 最高裁までもつれこむような長期戦では二十年近い歳月を費やすケースもみられます。もし30歳の時に結婚して2年後の32歳から18年間、50歳になるまで離婚裁判を戦うとしたら、どうでしょうか? あなたの人生を代表する出来事は、まさしく離婚そのものになってしまうでしょう。
 それではいけません。あなたが健全に生きるための離婚ですから、なるべく好ましい形で早期決着を目指すべきです。

 そのためにはどうするべきでしょうか?
 戦力の集中と、とにかく速度です。相手が反撃する態勢を整える前に最大戦力をぶつけて、一気に勝利を手にすることです。

 →離婚のフローチャートについて
 →夫の側の防衛戦術について
 →準備段階で集める証拠について

離婚時の資金調達

 離婚には、お金が必要なことが多々あります。
 別居も、新規にアパートを借りる場合などにはまとまったお金がかかりますし、弁護士に支払う相談料、興信所の調査代金などなど、出費はいろいろあります。
 しかもそれでいて、収入は増やせないという状況が少なくありません。特に離婚の6割は結婚5年以内に起きており、出産後間もなく、子供の世話で手いっぱいになってしまっている状況があります。正社員の立場もなく、特別なスキルもなければ、急には収入を増やしにくいこの場面では、非常に苦しむことになります。
 後のことは後で何とかするとしても、当座は短期的な資金調達を行いながら、離婚を勝ち取らねばなりません。

 戦略レベルの長期的資金調達には、やはりスキルが必要となってきます。

 →詳しくはこちら

 ですが、ここではそれ以外の、あくまで一時的な、離婚に至るまでの当面の資金を確保する戦術について説明します。

 →離婚時の資金調達について(婚姻費用の請求)
 →ヘソクリについて
 →離婚後補償について

別居戦術のポイント

 別居は、さまざまな理由で有用な戦術です。
 それ自体が婚姻の破綻を生み出す効力を有している他、夫が家庭内暴力を振るう場合には安全を確保する手段にもなり、またあなたの精神の健全性を保つ上でも、夫と遠ざかることにはポジティブな効用が期待できます。

 一方、別居中の夫の動向を掴むのは、難しくなります。あなたがいないところで、夫はとんでもない一手を打ってくるかもしれません。離婚に至る重大な証拠を残してきた場合には、まず間違いなく抹消されてしまうでしょう。
 一度家を出たらなかなか引き返せないものです。合鍵なんて、簡単に変えられてしまいます。

 別居という状況をどう生かし、いかに不利を生じさせないか。
 もちろん、暴力にさらされている状況では、そうした損得を計算している余裕などないこともありますが、可能な限り前後を考えて動きたいものです。

 →別居戦術のポイントについて

今の住居を確保する

 別居が始まっても、子供の都合もあって、あなたと子供が家に留まり、夫が出て行くパターンも考えられます。
 では、どうやって自宅を確保するか、借家だった場合は夫名義の場合もありますが、そうした状況ではどうすれば住み続ける事ができるのか。
 離婚はストレスがかかる作業です。住み慣れた環境を維持できるのなら、それに越したことはありません。

 →現在の住居を維持する方法について

財産分与

 離婚に際して、女性がもっとも期待をかける部分が、ここだと思います。
 男女ともに働くこの時代ですが、既婚者に限っていえば、男性の収入は女性のそれより遥かに大きいです。というのも、女性は産休その他でキャリアも中断し、収入水準も大きく下がるのですが、男性はそうはならないからです。
 加えて、女性は経済観念がしっかりしているので、最初から一定水準以上の男性しか、夫には選ばないことが多いです。そのため、はじめから給与水準の高い男性を相手に財産分与を仕掛けることができるのです。

 とはいえ、離婚の原因によっては、この部分にまったく期待をもてないケースもあるかと思います。例えば浪費とか……
 その場合は、損失が出ないようになるべく「取り戻す」という戦いになってしまいます。残念ですが。

 財産分与の基準は、あなたが専業主婦であるか、逆に夫が「ヒモ」か、それとも共働きだったのかによって変わってきます。
 説明するべきことが多く、いくつかの項目に分かれています。必要に応じてご確認ください。

 →財産分与の基準
 →財産分与における退職金や年金、難しいケース
 →財産分与の取り立て方法と譲渡税、など

慰謝料

 離婚するには、そうするだけの理由があるのが普通です。
 例えば夫が不倫した場合は、証拠が出揃ってさえいれば「不貞行為」についての慰謝料を要求できます。
 どのような場合に、どういう名目で、どの程度の慰謝料を期待できるのか、どうすれば慰謝料を請求できるのかについて説明します。

 →慰謝料について

子供をどうするか

 大半の女性は、可能なら子供は自分が引き取りたいと考えるものです。
 一般に、子供の年齢が小さければ小さいほど、母親が親権を取る可能性も高まります。幼い子供には母親が必要だとする裁判所の判断があるからです。

 但し、いざ別居となると、子供を連れて行くべきかどうか、悩むことも多いでしょう。これによって子供の生活環境はガラリと変わります。これまでの学校の友達と引き離されることで、離婚のダメージを軽減してくれる友情もなく、心に深刻なダメージを負う可能性もあります。
 また、状況によっては、夫に子供を取られたままのところからスタートしなければいけないこともあります。離婚した親による子供の連れ去りなども、よくニュースになっていますが、こういう場合、どうすれば子供を取り返せるのかについても、説明します。

 また、子供にも意志があります。
 両親が離婚するつもりでいて、ただ条件面だけを争っている状況の中で、子供だけが離婚に反対することも考えられます。
 最悪、子供が夫に引き取られた場合でも、面会の権利を確保しておきたいということもあるでしょう。

 子供に関する問題も、財産分与と同じく、非常に多岐に渡ります。

 →親権をとるために
 →養育費について
 →面接交渉について

新たなパートナーをどうするか

 離婚したら「もう男なんか金輪際いらない!」という気持ちになられる女性も少なくないかと思いますが……
 中には、新たなパートナー候補を見つけたがゆえに、今の夫との離婚を検討されている方もいらっしゃるかと思います。

 もちろん、こうした恋人の存在を今の夫に知らせるのは論外ですが、知られてしまった場合の対策も考えておく必要があります。特に、あなたが離婚を申し出た直後から、夫は頭脳をフル回転させてその原因と目的、あなたの本音を知ろうとし始めますから、よくよく注意しておかなくてはなりません。
 逆に、夫に愛人がいるというケースもあるでしょう。その場合には、どう立ち回れば有利になれるかも、ここで考えます。

 →婚外のパートナーの存在について

夫が外国人だった場合

 夫が日本人でない場合、離婚のルールが少しだけ変わってきます。
 どこの国の法律で離婚するのか、親子関係についてはどうなるのか、相手の国に離婚を許すルールがなかったらどうなるのか……
 国際結婚は、結婚する時も大変ですが、離婚するのも問題含みです。

 →外国人との離婚について

やってはいけない作戦

 倫理的にも、法的にも、やるべきでない行為というものがあります。
 例えば、夫はあなたに暴力を振るっているかもしれませんが、あなたが夫を殺害してはなりません。それは犯罪です。
 勝手に離婚届を出して、黙っていなくなるのも危険です。本人の承認なしに提出された離婚届は無効になるだけでなく、あなたのほうが文書偽造で懲役刑を科せられます。
 どれも常識の範囲の話ですが、念のためにこちらで指摘しておきます。また逆に、あなたがこうした対応を受けた場合の対策についても説明します。

 →やってはいけない作戦について

その他

 離婚に際しては、こまごまと対応すべきことがあります。
 例えば、旧姓に復するタイミングはどうなっているのか、といった問題です。
 知らなかったでは後からどうしようもないものもありますので事前に確認しておきましょう。

 →ペットについて
 →離婚後の姓について
 →夫への復讐について
 →離婚後に必要な知識について

戦う前に決着を

 具体的に離婚のプロセスを始動させた場合、これだけの問題が一気にわいて出てくるのです。
 そして法的なポイントにおいては、しばしば証拠を要求されます。
 いかに事前準備が重要かがわかるかと思います。

 問題だらけで大変ですが、一つずつ、決着のつけ方をハッキリさせておきましょう。
 前もって計画が出来上がってさえいれば、勝負は一瞬でついてくれるかもしれません。

 具体的な作戦をイメージできたら
 →幸せな離婚までの道程
 をご覧ください。

 順番に確認なさる場合には、下の青いボタンを押してください。

離婚のフローチャート

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