離婚とペット

離婚の戦術

 これを読んでいるあなた、犬や猫は好きですか?
 蓮沼は好きです。大好物です。食べるわけではないですが、食べてしまいたいくらいかわいいと感じます。いいですよね。

 しかし、離婚に際して、非常に悩ましいのがペットです。

 ペットはかわいいものです。多分、あなたにとっても子供に次ぐ存在ではないでしょうか。かわいいだけでなく、飼い主に懐いてくれて、しつけが行き届いていれば非常に忠実でもあります。そして子供の遊び相手にもなってくれる、なくてはならない家族でしょう。

ペットはモノ

 しかし、法律は非情です。法的な扱いとしては、ペットは「モノ」です。動産です。お金でやり取りできる存在で、家畜などと同じく、あくまで財産でしかありません。そこに命があるとか、そういう理屈は通じません。
 ならば粛々と所有権をどちらかに決めればよさそうなものですが、ペットには子供に似た特性があります。生存を維持するには日々のエサが必要で、他にも予防接種など医療費、ことによるとトリミングなどの美容についてのコストまでかかってきます。もちろん、一緒に散歩する時間的コストもかかりますし、猫ならキャットタワーなんかも欲しいところでしょう。そして、何よりペット可のマンションなどに引っ越すと、住居費も割高になりがちです。
 それでいてペットは家畜ではありませんから、普通は乳牛みたいにミルクがとれるでもなし、まさか屠殺して肉を販売するわけにもいかないでしょう。金銭的利益は一切生み出しません。

 つまり、ペットは、引き取ったほうがコストを支払い続ける負の財産なのです。
 しかも、これについて養育費の支払いを命じるような法律は存在しないのです。

守りたいという気持ちが弱みになる

 しかも、ペットは意識をもつ生き物ですから、当然にストレスを感じます。
 引越しなどの環境の変化にもダメージを受けますし、ケアが足りなければ、たとえば絶食させられれば、死んでしまいます。

 ペットを取り巻く人間の思いも問題となります。
 あなたは我慢できても、まだ小さいお子さんは、「ポチと遊びたい」といって悲しむかもしれません。

 このために、ペットを巡る争いは、非常に難しいものになります。
 仮に夫がペットの所有権をたてに離婚における争いを有利にしようとした場合、あなたは苦戦を強いられることになるでしょう。なんといっても夫は、あなたがどれだけペットを愛してきたかを、よく知っているのです。

 重要なのは、覚悟と方針を決めることです。
 何を優先するか、どうやって条件を飲ませるか。きれいに組み立てて、準備してから、夫に突きつけることが重要です。
 あなたの中でペットが非常に重要で、気がかりだったとしても、それを夫に悟らせるメリットはありません。離婚を申し渡された夫は、混乱の渦中にあります。そして、まず先に考えるのは子供のこと、財産のことなどでしょう。そうして考えがまとまらないうちに、ペットに関してもあなたに有利な条件を飲ませるのです。

 一つ、判断基準として、ペットの所有権の正当性を主張する上では、誰が購入したか、どちらの財布からお金が出たか、というのがポイントになります。もし、あなたがお金を出したのなら、その点を主張して所有権を訴えましょう。
 仮に、保護施設などから譲り受けたなど、金銭的にどちらが優位ともいえない場合には、たとえば身近にいて世話してきたのは誰か、といった話をするしかありませんが、これに法的根拠や正当性があるわけではありません。

契約書は、後々のことも考えて書く

 ペットを引き取る場合、エサ代や医療費などのコストがかかってきます。この分を、離婚時の念書を作成する際に、織り込ませましょう。
 それに苦情を申し立ててきたら、夫に世話できるのか、責任を取れるのかについて、しっかり追及しましょう。夜遅く帰宅する夫では、散歩に連れていくこともできない、普段から餌やりもしていない、という事実を列挙すれば、否定はできないでしょう。
 しかし、それらは決定打になり得ません。大切なのは、契約にすることです。

 念書の中に、ペットの分の養育費として、いくらずつ支払うという文言を書かせることです。
 エサ代など、費用は明確に計算できるはずなので、それを示しながらであれば、金額についての文句は言いにくいでしょう。
 ただ、この時注意したいのは「今、最近の費用」だけを考えてしまうことです。ペットは老化し、やがて死んでいきます。のちのち医療費が大きくのしかかってくる可能性もありますので、そうした場合にも困らないよう、対策しておきましょう。例えば、病気になった場合は、診断書を提出することで、医療費の半分を元夫に請求できる、などです。

 また、仮に夫のもとにペットを残していく場合でも、面会の権利を得ておきたい場合には、それも明記させましょう。
 協議離婚の際の念書に書かれた内容であれば、法的根拠を持ちます。公正証書にしておけば、夫がこれに違反した場合、責任追及が可能になります。

断固とした姿勢

 あなたが断固とした姿勢をみせないと、夫はペットがあなたの弱点だと気付いてしまいます。
 そうなると、ペットに過大な価値をつけて「引き取りたければ三百万円出せ」みたいな無理難題を言い出すこともあり得ます。こうなってからでは、話を進めにくくなるだけです。大事なのは、そうなる前の予防なので、ぜひとも離婚を進める上では、他の戦線で敗北しないよう、有利な証拠集めをしておくべきです。ちゃんと準備ができていれば「あなたの浮気が原因で離婚しようっていうのに、どうしてそんな偉そうなことが言えるの」と殴り返せるのです。

 逆に、ペットを夫に委ねたい場合には、そうしたコストのことはおくびにも出さず、購入するのにかかった代金だけを評価して、分与の対象にしてしまいましょう。これだけの値段の動産を渡したのだから、とその分、預金や他の動産を受け取るのです。

 現状、ペットについての法整備は充分とはいえません。
 だからこそ、あなたの立ち回りが重要です。事前によく作戦を考えておいてください。

離婚後の姓

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