離婚と、婚外のパートナーの存在について

離婚の戦術

 それが離婚の理由なのか、そうでないかはともかく、今現在、夫と婚姻関係にあるあなたに、別の恋人がいる事実は、非常にまずいです。言われるまでもないかと思いますが、可能な限り、そのことを知られないようにするべきです。

 他の記事をみればわかる通り、あらゆる面であなたにとって不利になるからです。

新たな恋人がいると、こんなに不都合

 まず、あなたが婚姻期間中で、かつ婚姻が破綻したといえる状態になる前に、他の男性と性交渉をもったとなれば、これは「不貞行為」です。数百万円の慰謝料を請求される危険があります。
 婚姻破綻後に恋愛し、そうした関係になった場合は、必ずしも慰謝料の対象とならずに済むかもしれませんが、いずれにせよ危ない橋です。
 また、新たな男性と同居を始めた場合、元夫から婚姻費用の減額を請求されるかもしれません。更には養育費の減額まで視野に入ります。

 それでも、新たな男性と新生活を始められるのであれば、ある程度は覚悟を決めておかねばなりません。
 お金の話ですから、もしその男性と継続してお付き合いなさる場合には、上記のような事態が起き得ることを理解してもらっておいてください。

子供の父親は誰?

 さて、問題は、あなたがその新しい恋人と再婚したい場合です。
 民法七七二条第二項には、こんな記述があります。

「婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取り消しの日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する」

 つまり、離婚しても三百日間は、子供ができても前夫の子であるとされてしまうのです。
 これが、男は離婚後にすぐ再婚できるのに、女性は六ヶ月間、再婚できない理由です。生まれてきた子供が、どちらの子供がわからなくなるためです。今の時代、DNA鑑定すれば一発ということはありますが……
 レアケースまで考えていくとキリがありませんが、その再婚相手が夫の弟だった、なんてことまで想定すると、それも意味がなくなります。

 女性の立場で言わせてもらえるなら「そんなこと、いちいち気にするな」と思うところです。誰の子でも子供である以上、扶養を必要とするのだから、社会が助けなくてはいけません。
 しかし、法的には、実父に養育費の支払いを命じるなど、やるべきことが出てきますから、やっぱり曖昧になってもらっては困るのです。

 だから、離婚前に妊娠していた場合で、かつ離婚して再婚禁止期間中に出産した場合は、その子供は前夫の子供と推定され、再婚が可能になります。また、前夫と再婚する場合や、夫の三年以上の生死不明を理由として離婚判決をもらってきた場合などは、六ヶ月の制限はありません。

 それで、問題はあなたが夫とは性交渉がなく、恋人とのみ関係があって、生まれてきたのが明らかに恋人の子供の場合です。離婚した日から三百日以内に生まれた場合、そのまま出生届を提出すると、前夫の戸籍に入ってしまうのです。
 新しい夫の子供ということにしたいのなら、離婚後に妊娠したことを証明する医師の証明書を用意しましょう。
 または、夫が単身赴任でずっと会っていないなど、離婚後三百日以内の出産であったとしても、夫の子供でないことを証明できる場合には、家庭裁判所に「親子関係不存在確認」の調停を申し立てることができます。これは、あなたと前夫、今の夫、それに子供自身も申し立てることができます。

 そうした条件がない場合は、基本的に子供は前夫の子供ということになります。
 離婚後三百日以内(離婚前も含む)で、前夫との間の子供でない場合は、前夫は家庭裁判所に「嫡出否認」の調停を申した得ることができます。調停によって「前夫の子ではない」という合意ができて、家庭裁判所が調査して事実が認められれば、前夫と子供の親子関係は否定されます。
 しかし、この申し立ては、子供が生まれたことを知ってから一年以内にしなければなりません。また、一度、自分の子供であることを認めると、原則として嫡出否認はできません。

 このことは、夫側の義務として降りかかってきます。
 例えば、離婚前にあなたが恋人の子を産んだとします。何も知らない夫は、それを自分の子供だと思って認知しますが、あとで浮気の事実を知ってあなたに離婚を申し渡したとします。
 しかし、この時点で既に出産から二年も経っていたとすると、もう嫡出否認はできません。夫は、あなたの恋人の子に対して、親としての責任をとらねばならないのです。それは養育費の支払いなどの義務にも及びます。
 あとから前夫が怒り狂っても、もうどうしようもないというわけですね。一応、正当性としては、子の利益を優先するべきだから、というのが根拠となっているようです。既に定着した親子関係を覆すわけにはいかない、ということです。

 これ、使えるじゃん……と思った女性もいるかもしれません。
 夫に、夫以外の男性が父親の子供を育てさせる。養育費を負担させ続ける。楽しい復讐になりそうだ、と。
 ですが、私、蓮沼としては、さすがにリスクが大きすぎる仕返しだと思うので、やって欲しくはありません。それに、人の心は法律では縛れません。

今まで俺は自分の子供だと思っていたのに、違うのか! 騙されていたのか!」

 と逆上して、あなたや子供を手にかけるかもしれないからです。

養子縁組

 では、それで不都合はないのか、ということですが……

 仮に、前夫が貧しく借金だらけで、新しい夫は裕福だったとします。
 前夫が死亡した場合、子供はその財産を相続することになります。相続をしないという選択をしなかった場合、単純相続になるので、負債もそのまま引き継ぐことになってしまいます。それを回避しても、手元に残るものはゼロです。
 一方、新たな夫が死亡した場合にも相続が発生しますが、妻であるあなたはともかく、子供には相続権がありません。仮にもし、その子に弟や妹がいた場合、そちらにだけ相続権が発生します。

 というわけで、そういうケースでは、タイミングを見計らって養子縁組をするという手があります。

 子供を自分の戸籍に入れている母親が再婚した場合、母親と再婚相手は新しい戸籍を作りますが、子供は再婚前の母親の戸籍のままです。また、再婚によって母親の姓が変わっても、子供の姓は変わりません。
 子供を母親と同じ戸籍に入れるには、再婚相手と子供の養子縁組をします。養子縁組をすると、子供は母親と再婚相手の戸籍に入り、同じ姓になります。また、再婚相手の嫡出子と同じ身分を獲ることになり、養父の財産も相続できます。

 通常の養子縁組において、未成年者が対象である場合には、家庭裁判所の許可を要しますが、配偶者の連れ子を養子にする場合には、許可は不要です。

夫に愛人がいたら

 逆に夫に愛人がいる場合を考えてみましょう。
 多くの場合、夫はその事実を隠そうとします。しかし、痕跡は残るものなので、なるべく探すようにしてください。

 具体的な証拠探しの方法については、こちらで述べています。

 夫婦間であまりに力関係の差がありすぎる場合には、夫が愛人の存在を隠そうとすらしないこともあります。女性にしてみれば、かなりの屈辱ですが、ここはあえて怒りをこらえて耐えましょう。その間に、有利な離婚をするための条件を整えるのです。
 しかし、夫にかなりの財力があり、しかもあなたとの間に子供がいないなど、条件が揃ってくると、夫はあなたとの離婚を選んで、愛人と一緒になろうとするかもしれません。

 こうなってくると、あなたがどう判断するかにかかってきます。
 夫から少しでも多くのお金を引き出したいのか。それともキッパリ別れて人生をやり直すか。
 お金を引っ張る方向で考えるなら、とにかく離婚に同意しないことです。婚姻が破綻しなければ、有責配偶者からの離婚は成立しません。だから、なんとしても破綻していないといえる形を整える努力をしなければなりません。
 別れるとしても、あなたがかなりの高齢者でもない限り、慰謝料は数百万円です。気持ちが収まらないところはあるかもしれませんが、離婚後の人生をどう組み立てるかを考えておかないと、苦しい思いをするでしょう。

 他でも述べましたが、離婚後、夫が再婚して新たに子供をもうけた場合、資力が足りなければ、今の家庭に重点を置くことが許されてしまっています。その意味で、夫が再婚するのはあなたにとってマイナスになりかねません。

 変な話ですが、離婚しても、どちらかが新たなパートナーを得て新生活を営み始めると、どちらのケースでも女性に不利益が出てきてしまうことがあるのです。
 そうしたダメージを最小にするには、やはり女性が自力で生きていけるだけの経済力をもつしかないでしょう。

外国人との離婚について

タイトルとURLをコピーしました