外国人との離婚について

離婚の戦術

 離婚をややこしくさせる要因として、国際結婚があります。

離婚制度の違う国

 仮にあなたがドイツ人の男性と結婚し、けれども離婚したいとなった場合には、いったいどちらの国の法律で離婚することになるのでしょうか?

 国によって、離婚の要件は異なります。というか、国によっては離婚自体が許されない国もあります。ウズベキスタンでは、離婚の際には罰金まで発生するそうです。また、紙切れ一枚で離婚できる日本のような国もあれば、ドイツのように裁判なしでは離婚できない国もあります。日本では有責主義、破綻主義ともとりあげますが、そうではない国もあります。
 かつては離婚のルールはずっと男性寄りにできていました。どちらの国の人であろうとも、夫の国籍に従って裁判を行うとされていたのです。しかし、これは男女平等に反するということで、今では改められています。
 基本的に今では、「夫婦の常居所地法(夫婦が定住している国の法律)」に改正される方向になっています。とはいえ、それですべてが解決するとは限りません。
 具体的に考えればすぐわかります。ドイツ人の夫と日本人のあなたが、それぞれ単身赴任でパラグアイとアメリカで暮らしていたら、いったいどこの法律で離婚すればいいのでしょうか? 夫の本国でも、妻の本国でも、居住国でも裁判を受け付けるとなると、基準の食い違いも起きてきます。実のところ、こうしたケースの解決方法は統一されていませんので、いざ、そういうことになったら、専門家に相談する以外にないのが実情です。

 但し、夫婦とも日本で居住しているのであれば、あなたが日本人であれば、日本で裁判できるのは間違いありません。離婚の国際裁判管轄は、原則として被告の居住国である、とした最高裁判所の判決があります。
 また、当然ながら夫婦がどちらも日本人で、それが海外に住んでいるだけなら、やはり日本の国内法で離婚できます。
 共通の本国法がない、つまり国籍が違う場合は居住地が優先で、それもない場合には、夫婦に最も関係が深い国の法律となります。

 しかし、そうなると夫はどうなるのでしょうか?
 ドイツの法律では、裁判離婚しか認めていません。日本であなたが離婚届を出したとしたら、これは協議離婚ですから、ドイツの法律にはないやり方です。
 しかし、ドイツでも外国の裁判所の関与した離婚であれば、一定の手続きによって承認されますので、家庭裁判所での調停離婚といった形を取れば、まず間違いはないでしょう。

子供の国籍は

 夫婦だけなら比較的簡単な離婚も、子供が絡むと複雑になります。それは国際結婚の場合で、なお顕著になります。
 日本人にとって最も身近な外国人といえば韓国人ですが、仮にあなたが、在日韓国人の男性と結婚し、子供を産んでいたとするなら、離婚はどういった形になるでしょうか?

 まず、あなたと夫は日本に住んでいるので、日本の法律で問題なく離婚できます
 また、韓国民法では協議離婚も認めています。よって普通に離婚届を出せば問題ありません。

 それから子供ですが……
 あなたの子供なので、1984年の国籍法の改正があったことを考慮すると、それ以後に生まれた子供であれば、父母いずれかが日本人であれば日本国籍を取得するとされています。父親が韓国籍なら、韓国籍もとっているので、二重国籍の状態であるはずです。
 大人になってから子供が自分で一方の国籍を選ぶことになるはずですが、もしまだ幼いのに韓国籍になっていたとしたら、一度、日本国籍を離脱したのでしょう。

 親子関係の法律関係は、子の本国法が父または母の本国方と同一である場合には子の本国法により、その他の場合は子の常居所地法によるとされています。つまり、もし子供が日本国籍を離脱していた場合には、韓国法が適用されます。
 かつての韓国民法では、子の親権者は父親と決まっていましたが、1991年に改正され、父母ともに親権者となれることになりました。ですので、あなたが親権者になることも可能です。

 最後に日本国籍を離脱したからといって、さほどの心配は不要であることを述べておきます。
 帰化の手続きをすれば、日本国籍を再取得できます。離婚後に子供の親権者として申請すれば、簡単に認められます。

離婚制度がない国

 厄介なのは、離婚を認めない国の人と結婚した場合ですね。
 日本人女性でフィリピン人と結婚しているという話はほとんど聞かないのですが、フィリピンもカトリックの国ですから、基本的に離婚ができません

 それでも、日本国内に相手がいれば、そして離婚に同意してくれていれば、離婚届を作成して役所に提出することで、少なくとも日本国内の離婚は成立します。
 原則として、フィリピンは離婚を許さない国ですが、家族法において「外国人の配偶者が本国で再婚の資格が与えられたときは、その配偶者たるフィリピン人も再婚できる」とされていますので、相手にとっても後腐れがありません。

 しかし、相手がフィリピンに帰国してしまっていると厄介です。
 連絡先がわかるなら、そこに行って説得するなり、離婚届を郵送して記入してもらうなりしないといけません。しかし、勝手に帰国しておいて、かつ離婚も受け入れてくれないとなると、裁判を起こす以外の方法がありません。

 相手の所在が明らかな場合には、被告居住国が裁判管轄になりますので、まともにやったらフィリピン法で決着をつけることになります。これでは勝ち目がないでしょう。つまり、条件を提示して受け入れてもらうほかなくなります。
 しかし、相手の所在が不明であれば、或いはあなたを放り出して勝手に帰国したなど「遺棄」されたといえる状況であれば原告居住国、つまり日本の裁判所に訴えることも可能になります。まともな話し合いにも応じてくれず、あなたに無断で帰国したなどの事情があれば、こちらを検討できます。
 但し、この離婚の道程は、果てしないものになります。訴状が相手に送達されるのを待って審理が開始されます。外交ルートを通じてのことになるので、それだけで数ヶ月かかります。相手が日本の裁判所に出頭するか、弁護士を代理人として裁判に応じるか、欠席のまま裁判が行われるか、いずれかになるでしょう。

養育費など、離婚後も大変なのが国際離婚

 離婚が成立しても、その後の生活があります。
 アメリカ人の夫と結婚するも離婚、彼がアメリカに帰国してしまったという場合、生活費や養育費の支払いは受けられるのでしょうか?

 この場合、離婚が成立するまでに、公正証書を作っておくべきです。
 婚姻費用は配偶者に対する扶養と考えられますが、「扶養義務の準拠法に関する法律」においては、扶養権利者の常居所地法が適用されます。つまり、あなたは日本に残るのですし、夫も離婚するまでは日本にいたのですから、日本の法律で決まることになります。
 だから、日本の家庭裁判所に婚姻費用分担の調停を申し立てることができます。
 また、アメリカの多くの州で、離婚後の養育費の支払い確保のために、所得から天引きする制度があります。州が直接扶養義務者から養育費を取り立て、被扶養者には公的扶助を与えるという制度もあります。

 ただ、アメリカのように州ごとに法律が違う国の男性と離婚する場合には、専門家の助力が不可欠でしょう。

離婚において、やってはいけない作戦

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