現在のところ、ほとんどが女性の問題といえるのが、姓の変更です。
結婚した時点で、男女どちらかが相手の姓に変更しなければなりません。夫婦別姓を選択できないのは違憲だとして裁判で争う人もいますが、どうも旗色がよくないようです。
結局、多くの場合は「嫁入り」ということで、女性が姓を変え、男は結婚前と変わらない名前を名乗り続けます。
蓮沼としては、そうですね……
夫婦別姓にしないと女性差別だ、というのは、一概にそうとも言い切れない面もあると思います。中国、韓国あたりでは、夫婦別姓が当たり前で、結婚しても姓は変わりません。でもそれは、もともと儒教と男尊女卑、一夫多妻制ありきだったからです。
名目より、実益を取るべきだと思いますので、あまり優先度の高い問題ではないと考えています。極論をいえば、姓なんていらないんですよ。
離婚さえしなければ、問題になるところではないのです。
離婚後の姓は選択できる
ところが、離婚となるとどうでしょうか。
別れた夫の名前なんか、地べたに叩きつけて捨ててやりたいというのが、女性の本音でしょう。しかしながら、仕事その他で「田中」と名乗ってきた以上、いきなり変えると社会生活に問題が出てくる可能性もあります。そこで今の法律では、夫の姓を使い続けることも許可しています。
もちろん、旧姓に復することも可能ですが……
タイミングに注意してください。
旧姓に復するかどうかの判断は、離婚の時点で決めなくてはいけません。一度離婚したら、いつでも旧姓に戻れる、ではないのです。
とある女性が、離婚時に夫の姓を使い続けることにして、後から変更しようとしても手続きできず、最後には精神を病んでしまった、という例まであります。大騒ぎになってしまいますので、最初からきちんと決めておくのがいいです。
原則としては、離婚時に元の姓に戻るものなのですが、夫の姓を使い続ける場合には「離婚の際に称していた氏を称する届」を、あなたの住所地または本籍地の市区町村役所の戸籍係に提出します。
提出期限は、離婚後三ヶ月以内です。期間内であれば、理由も問われませんし、元夫の許可も要りません。
もしその期限を超過してから、やはり姓を変えたいとなったら、家庭裁判所の許可が必要になります。これは、姓を旧姓にする場合でも、夫の姓を使う場合でも同様です。
離婚時に選択した姓を変更するには、家庭裁判所に「氏の変更許可」を申し立てて認められなければなりません。姓の変更は社会的影響が大きいとされ、簡単に許可されるものではないので、離婚時にはよく考えておくべきです。
それでも変えたいという場合には、「家事審判申立書(氏の変更)」を申立人の住所を管轄する家庭裁判所に提出します。
氏を変更しないと社会生活において支障をきたす理由を書かねばなりません。
戸籍という仕組み
国は姓の変更について随分と口うるさいようですが……
これには「戸籍」という考え方があるためかもしれません。
基本的には、戸籍は夫婦とその子を単位として作られています。それが結婚すると、親の戸籍を出て、夫か妻、どちらかを筆頭者とした戸籍が作られます。その戸籍の中では、姓は統一されていなければなりません。
だから、嫁入りした場合には、夫の姓を名乗るので、夫が筆頭者になります。逆に婿入りだった場合には、妻が筆頭者になります。
これが離婚となると、筆頭者でない側が戸籍から抜けることになります。
つまり、親の戸籍に戻るか、新たな戸籍を作るのです。しかし、夫の姓を名乗り続ける場合や、子供を引き取って自分の戸籍に入れる場合は、親の戸籍には戻れないので、新たに作ることになります。
このような手続きがあるために、選択的夫婦別姓が議論されても、国はいい顔をしないのでしょう。
子供の姓
夫婦が離婚して、間に子供がいる場合には、少し面倒なことになることがあります。
というのも、何もしないでただ離婚すると、筆頭者でない側が新たな戸籍を作るだけだからです。多くの場合、それは妻ですから、こういう戸籍ができることになります。
離婚前:
☆山田堕滅夫
山田妻恵
山田唯子
離婚後1(旧姓に復する):
☆山田堕滅夫
山田唯子
☆高橋妻恵
離婚後2(夫の姓を使い続ける):
☆山田堕滅夫
山田唯子
☆山田妻恵
☆のついているのが戸籍の筆頭者です。
これは、仮にあなたが唯子の親権者であろうとも、関係なくこうなります。子供は筆頭者の戸籍に入ったままなのです。
だから、夫が入り婿だった場合で離婚が成立すると、夫が一人きりの戸籍を作ります。
多くのケースで夫が筆頭者でしょうし、一方で女性に親権がいくケースも多く、子供と同居するのも女性です。
よって、子供の戸籍を変更する必要が出てきます。
手続きとしては、次のようになります。
1.離婚の際に、あなたを筆頭者とした戸籍を作る(親の戸籍に戻らない)
2.家庭裁判所に子の氏の変更許可を得る
3.変更許可を得たら、子供を母親の戸籍に入籍する(子供の姓も母親と同一になる)
これによって子供の姓も変わります。