別居中、離婚後の面接交渉について

離婚の戦術

 子供と離れて暮らす親には、離婚後、子供と会ったり連絡を取ったりする権利があります。これを面接交渉権といいます。

 民法七六六条には

「父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子の面会及びその他の交流について、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない」

 とあります。
 つまり、離婚に際しては父母は責任をもち、子供の利益が優先されるべきであると定められているのです。
 ゆえに、あなたが離婚しても、元夫を子供の人生から完全に排除することは難しいです。あなたがいくら夫を嫌っていても、子供は父親に懐いているかもしれません。その場合、子供が「パパに会いたい」と言ったのに握り潰すのは、法の趣旨に反する行為となってしまいます。

面会を拒否できるケースとは

 逆を言えば、夫に重大な問題がある場合は、面接交渉権は成立しないということになります。
 具体的には、子供に害があると証明できるのであれば、面接を拒否できます。子供に暴力を振るう、養育費を支払う義務を果たしていない、子供にあなたの悪口を吹き込む、勝手に連れ去られる可能性があるなどです。

 この辺は、実は結構、争いのポイントになっています。
 以前、暴力を振るっていた元夫が、面接交渉権を認められなかった例もある一方、不当に面接交渉を拒否したとして、女性に五百万円もの慰謝料支払いを命じた判例もあるのです。
 だから、夫は嫌い、ムカつくから、というだけでは、面接の邪魔をしてはなりません。残念ながら、あなたには子供の面接の権利を奪うことは許されていないのです。

 しかし、子供が自分から「会いたくない」と言い出したら、話は別です。面接交渉権は、離婚した元夫の権利である以上に、子の権利だからです。
 だからといって「よし、ザマァみろ、これで元夫は金を払うだけ、子供にはもう会えないんだ」と喜ぶのも早計です。なぜなら、子供に会えなくなった元夫が、訴えを起こすかもしれないからです。

「元妻が、俺に嫌がらせをしている。俺は会いたいのに、息子は母親に配慮して、俺に会いたいとは言えなくなっているんだ。これは元妻が、息子にプレッシャーをかけているからなんだ」

 面接交渉権を否定するには、客観的証拠が必要です。
 例えば、父親に殴られて痣ができたという証拠、写真や医師の診断書などがあるなら「暴力が怖いからいやだ」といえますが、それがない場合、本当に母親のせいかもしれないと裁判所が考える可能性もあります。

 実際、離婚を目の当たりにした子供は、驚くほど大人に配慮します。
 私が実際に見た例ですが、まだ三歳の男児が、父親に向かってこう言ったのです。

「(両親が離婚したのは)パパのせいじゃないからね」

 じゃあ、ママのせいなのか、と言ったら、そんなことを母親に言ったはずもありません。
 この父親は、私(蓮沼)や子供の目の前でも「あのバカ女」などと悪態をついていました(子供が寝てから、「二度と言うな」と釘を刺しましたが)。そうした親の感情を敏感に察知して、子供は立ち回っているのです。

 実のところ、子供を二度と夫に会わせたくないなら、客観的証拠を集めましょう。子供にとって害になるという理由の説明ができなくてはいけません。
 逆に、あなたが子供に「父親には会うな」と釘を刺していたとしたら、証拠を掴まれでもしたら、大変なことになります。例えば、面接ができない子供が、こっそり夫の家に電話をかけていたらどうでしょうか? しかも、それが録音されていたら……
 忙しいから、子供は今病気だから、子供が嫌がっているから。理由を列挙するのは簡単ですが、慎重に判断してください。

 そしてもう一つ。本当に子供を父親に会わせなくていいかどうかも、考えてあげてください。

あなたが面会を求める側だった場合

 逆に、あなたがやむなく子供を夫の元に残した場合で、夫が面接を認めてくれない場合には、どうすべきでしょうか?
 家庭裁判所に面接交渉を求める調停を申し立てます。既に調停長所などの裁判上の書類が揃っている場合は、履行勧告の申し立てをしてください。裁判所が子供の意志を確認したり、元夫の意見を聴取するなどして、面接交渉を実現させるための方策を検討してくれます。

 また、元夫のもとに留まった子供が虐待されている場合は、急を要します。

 かといって、離婚した元配偶者が、子供を略取しても、手続きに則って取り返される可能性が高いです。虐待の事実が明らかであるなら、やむを得ないことと判断されるとは思いますが、基本的には児童相談所に通報するべきでしょう。あなたが、即座に子供を迎え入れる環境を用意できなくても、児童相談所は一時保護所に子供を入所させてくれます。保護期間は1~2ヶ月ですから、その間に、あなたも手を打ちましょう。
 もし、あなたが親権者になるつもりがあり、子供を引き取って育てるのであれば、家庭裁判所に対して親権変更の申し立てをしましょう。この審判について結論が出るには時間がかかります。その間、父親の親権を停止するためには、親権の一時執行停止、親権代行者選任の仮処分の申し立てをします。
 子供にまで手をあげるような夫なら、何をしでかすかわかりません。こういった深刻な状況では、あなた一人で解決しようとせず、弁護士を利用することを考えましょう。

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