離婚の準備段階で集める証拠

離婚の戦術

 有利な離婚のためには、これが一番大切です。
 事前の証拠集め
 これをどれだけ丁寧にやっておいたかで、協議離婚、ひいてはその後の調停や裁判でも、有利不利が変わります。
 蓮沼としても、離婚を希望する女性のサポートにまわる際に、何の証拠集めもしてない状態でご相談いただいても、思ったようにお力になれなかったりします。

 といっても、何を集めればいいのでしょうか?
 夫が浮気相手とラブホテルに入る瞬間を捉えた写真なんかがあれば最高ですが、その一枚だけで何もかもが解決するわけではありません。

 まずは家捜しです。
 といっても、別居中でもない限り、あなたも家の中に住んでいます。私が指摘しているのは、夫の近辺や家の中にある僅かな痕跡を拾い集める努力をしましょう、ということです。

浮気の痕跡

 例えば夫が不倫相手と秘密の密会を楽しんでいるとします。24時間、夫を見張っていられるなら別ですが、さもなければあなたは決定的な証拠を握ることは、この時点ではまだできません。

 しかし、実際に夫の立場から考えてみると、密会の実現にはさまざまなステップが必要です。まず、意中の彼女と次のデートの予定を決めなくてはいけません。連絡手段はスマホでしょうか、それともパソコンのメールでしょうか。
 既に決まった彼女がいる場合は、そうして直接連絡をしているかもしれませんが、もしかすると、ツイッターなどのSNSで、その都度「援交」「パパ活」の相手を見つけているのかもしれません。
 LINEなどでダイレクトメッセージをやり取りしている場合もあれば、パパ活専用アプリをインストールしているかもしれません。

 よく、夫が入浴中にスマホのロックが外れていて、運よく中を見ることができた、そしたらスマホに保存されている写真の中に、裸の浮気相手の写真が見つかった、なんて成功例が語られていたりしますが、こんなラッキーは稀です。
 仮にキーロックを突破できたところで、LINEの連絡先は無数にありますし、ダブル不倫なんかだったりすると、互いに危険性を承知の上で付き合っているわけですから、都合の悪い会話データなんかは削除していても不思議はありません。

 ただ、それでも探す努力をしてみること自体に意味があります
 例えば、今日も会社の残業を終えて、夫が帰ってきたとします。あなたは内心では、こうも毎晩遅いのには、何かわけがあるのではないか、実は中には浮気相手と遊んでいる日もあるのではないかと思っています。
 それでわざと、お疲れ様、と言いながらスーツを預かろうとしてみてください。どんな反応がみられるでしょうか?
 一日残業してきたのなら、夏なら汗臭かったりしますし、冬なら指先まで冷え切っていたりします。しかし、愛人とラブホテルで入浴してイチャついていたら、体臭はきっと洗い流されていますし、体も温まっているかもしれないのです。そして、そのことは本人がわかっていますから、体に触れられることを無意識のうちに恐れます
 また、胸の内ポケットに入れっ放しのスマートフォン。やましいところがなければ、妻が勝手に取り出してテーブルの上に置いたところで「どこに置いたんだ?」といった程度で済むでしょう。しかし、身に覚えがあるなら、それこそ妻が手を触れるのさえ毛嫌いするはずです。
 財布やポケットの中もそうです。うっかりホテルやレストランの領収証が残っているかもしれません。もちろん、ダイレクトな証拠がそのまま見つかるケースは、そう多くはないです。例えば、夫がソープランド通いをしていて、その経費を仕事の交際費にしようとしていた場合には、領収証には全然別の組織の名前が書き込まれています。だから、意識せずざっと見ただけでは、何の証拠も見つからないのが普通です。
 それでも、これらから重大な手がかりが得られる可能性がある上、夫の仕草や表情から、類推できる材料が得られるかもしれないのです。

 例えば、夫のスマホに残っている写真
 交際相手の全裸写真なんていう大物は、そうそうゲットできませんが、見慣れない風景があったら要注意です。一見、なんてことのない風景写真ですが、二人きりでどこか遠くに旅行した証拠かもしれません。なんか看板に上州とか書いてあるから群馬県? 移動手段は? 領収証に高速道路に乗ったのがあった! これで日時もわかったけど、絶対、私とじゃないぞ! という具合です。
 こういった状況証拠は、興信所に調査を依頼する際にも役立ちますし、裁判の際には状況証拠として利用されることもあります。

 とはいっても、まずパソコンやスマホのロックをどう突破するのかという問題もあります。
 こういうものによく使われるのが、誕生日記念日です。確かに、本人のことをまったく知らない人が拾ってロック解除しようとした場合は、かなり有効性の高いパスワードになりますが、あなたは妻で、彼の誕生日なども知っています。不倫相手のそれは、わからないでしょうが……
 あとは彼の趣味なども手がかりになるかもしれません。いくつか候補を考えてみてください。

 また、メモ帳なんかもバカになりません。
 カレンダーのところなどに、何かのマークが残されている場合があります。仕事上のイベントを記録したものかもしれませんが、日付がわかっていれば、その日、夫がどこにいたかを思い出すことで、これも行動を類推することができます。

「そういえば、☆マークの日は、いつも遅かったな……」

 もちろん、本当に特別な会議とか、厄介なお客様のところをまわる日だったりといったことも考えられるので、絶対ではありません。ただ、特に観察力を発揮すべきタイミングであることは確かです。
 とある裁判では、女性の手帳を取り上げて、カレンダーの日付にハートマークが書かれている箇所について「これは逢引の日を記録したものではないか」と尋ねて、本人が認めたという例もあるそうです。

 ただ、そうした手がかりを手に入れても、素人にはどれが証拠かわからないという問題もあるのです。
 だから、最終的な段階では、やはりプロの力を借りたほうがうまくいくことが多いようです。

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 ある程度のところまで調査したら、無料相談を受けてみるのもいいかもしれません。

家計の全貌を常に把握する

 しかし、もっと大事な調査もあります。
 浮気したかどうかよりも、いったいこの家庭にはどれだけの収入があり、支出があるのか、夫婦が築いた共同財産はどれほどあるのか、という情報です。
 これをおろそかにすると、離婚が始まってから、夫の財産隠しに対して適切な対応が取れなくなります。

 ある程度まともな夫であれば、毎月決まった日に数万円ずつ、これまた決まった金額を指定の口座に振り込んでおいてくれたり、または手渡ししてくれたりするものですが、そもそも離婚したくなるような夫の場合は、経済観念がブッ飛んでいることが少なくありません。
 足りないからちょうだい、というと、じゃあ、と不定期に毎回違った額を渡される、なんてことも珍しくありません。夫は何か、競馬とか他の趣味などにのめりこんでおり、お金を出すのもしぶしぶで、だからそれらで使い込んでいない時、或いはギャンブルに勝った時だけ、大盤振る舞いでお金が入ってくるのです。
 昔は日雇い労働者もいましたし、そういう家計が少なくなかったのです。が、驚いたことに、今でもそういうやりくりをしているところがあるのです。

 結果、妻は夫の月収を知らず、夫自身も実はろくに把握していないという、恐ろしい状況になってしまうのです。
 しかしこれでは、妻と夫の収入差を明らかにできないので、別居時の婚姻費用請求にも差支えが出てきますし、共同財産がどの程度なのかという見積もりもできず、財産分与にも支障があります。そして、いざ離婚となれば、更にここに夫の情報隠蔽が加わるのです。
 いくら有能な弁護士を雇おうとも、情報なしでは婚姻費用の請求も、財産分与もできません。

  • 給与明細表
  • 源泉徴収票
  • 所得証明書

 自営業なら

  • 確定申告書の控え

 も入手しておきましょう。
 もちろん、原本である必要はなく、どれもコピーで構いません。
 また、夫の浪費が原因で別れる場合には、特にクレジットカードの引き落とし履歴通帳などの記録が役に立ちます。これもいつでも証拠として提出できるようにしましょう。

 婚姻費用養育費などは、家族の数と夫婦の収入、家計の収支を鑑みて算定されるものです。家計簿をつけなくてもやっていけるような家庭は、それはそれで幸せなものなのかもしれませんが、いざ離婚となると、非常に苦労することになるのです。
 これらの情報は、家庭が崩壊する前なら、さしたる苦労もなく入手できます。役所に所得証明書をもらいにいく際にも、夫からの委任状など、すぐもらえるでしょう。役所は今、個人情報漏洩に対して敏感なので、いくら「妻です」と言っても、委任状なしでは受け付けてくれません。

 情報集めは、戦争における軍備と同じです。
 平和なうちに整えておかなくてはならないのです。

診断書をとるチャンスを逃してはいけない

 それから、夫が暴力を振るう場合には、積極的に証拠集めをするべきです。
 変な言い方ですが、痣ができるまで殴られたら、絶対にこのチャンスを逃してはなりません。青痣が残っているうちに病院を訪ね、絶対に医師に診断書を書いてもらいましょう。病院でも撮影してくれるかもしれませんが、写真も自撮りしておくといいです。
 ついでに、ネット上のブログでもいいし、日記でもいいので、何をどうされたか、なるべく具体的に書き残しましょう。

「顔を殴られた」

 なんて短い文章では、具体性が伝わってきません。もっと詳細にです。

 夫は『これだから関西の女はダメなんだ、淑やかさがない』と見下すように言った。
 反発して『そんなん決め付けやん。私だって、優しくしてくれたら、優しくするわ』と言い返した。そうしたら夫は怒り出して『お前、何様だ。まず先のお前が妻らしい態度をとってから、そういうことは言え』と言って、私に飛びかかった。
 髪の毛を掴まれて、無理やり引っ張られた。どうすることもできなくて、洗面台の前に引き摺りこまれて、顔をあげさせられた。『見ろ、この憎たらしい汚い顔を』『そんなこと、言われたないわ』『黙れ』
 私を向き直らせると、左手で髪の毛を掴んだまま、右の握り拳で二回、私の側頭部と顎の下を殴った。

 上手な文章である必要は、まったくありません
 ただ、創作して書いたにしては具体的すぎる内容を、丁寧に残していけばいいのです。大量の記録が古い日付で残されている場合、「妻が夫に罪をかぶせようとして嘘を言っているとは考えにくい」と看做され、証拠能力を有することがあります

 特に、目に見える暴力は青痣の写真を撮れば残せますが、暴言などによる精神的虐待は、こうした記録に頼るしかありません。
 毎日妻に向かって「このブスが」などと言い放つ夫がいたとしたら、どうでしょうか? これは立派な精神的暴力であり、婚姻を破綻させる行為であるとみなすことができるのです。

事前準備を極めし者が離婚を制する

 証拠集めは、離婚係争中に急にやろうとしても、手遅れなことが多いです。
 家庭が円満なうちから、家計簿をつけたり日記を書いたりするなどして、自然な形での習慣化を目指すといいかと思います。

 また、証拠を使うタイミングもよく考えてください。
 例えば、夫が不倫した、だから離婚するという場合、普通は協議離婚の段階で証拠を並べて夫を観念させるのに使うのがいいのですが、万一、夫が諦めずに抵抗してきた場合、あなたが見せつけた証拠の存在を知っているので、何らか裁判における対策を考えてきます。

「僕は確かに不倫したが、それは妻がセックスに応じてくれなかったからだ」
「いつも僕に冷たくあたるので、どうしてもその気になれなかった」

 などなどといった訴えをして、自分の罪を少しでも軽くしようとするでしょう。
 意味があるのか、と思うかもしれませんが、不貞行為の前に家庭が破綻していた証拠を作り出そうとしているのかもしれません。あなたにしても、別居して家庭生活が破綻した後に別の男性と交際をもっても、これは破綻の原因ということにはなりませんから、そうやって慰謝料を減額しようとすることは、まったくの無駄ともいえません。

 この辺のタイミングについても、プロに相談すれば、どう証拠を使うべきかも教えてくれるでしょう。

AMUSE(アムス)

 離婚における証拠は、とても重要です。
 大事に扱ってください。

離婚時の資金調達

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