離婚の原因:不貞行為

離婚の原因・理由

 離婚の原因として、外せないのは「不貞行為」……いわゆる浮気、不倫です。
 あなたという女性がありながら、どこかで勝手に他の女性と性的関係をもつ。こんなことは許されるはずがありません。

 しかし、これを理由に離婚しようとするのなら、なんとしても必要なものがあります。
 それは「客観的証拠」です。

証拠の種類……性交渉があったと類推できることが重要

 一番いいのは、夫が浮気しているという具体的な証拠です。
 といっても、相手の女性とベッドインしているところに乗り込んでいって写真撮影、なんてのは現実的ではありません。もしそれができたら、楽しくて仕方ないでしょうけれど。よっぽど腕のいい興信所から探偵を雇って、しかも夫が迂闊にも自宅でことに及ぶなどでもなければ、そんな瞬間を完璧に捉えるなんて、不可能でしょう。

 なので、もう少しランクの落ちる証拠でも、裁判所は認めてくれます。
 具体的には、

  • ラブホテルに二人で入るところを捉えた写真がある
  • 二人が同じホテルの部屋に宿泊した証拠を見つけた
  • メールで性的な関係があることを述べているのが確認できる

 などが必要です。これも簡単ではありません。
 ラブホテルに入る前なんかは、きっちり尾行してホテルに入る直前を掴まなくてはいけません。ラブホテルの横を二人して通り抜けただけであれば、当然、不倫とは言えないからです。
 写真がなくても、二人が同室で寝た事実を確認できれば充分なのですが、宿泊施設が個人情報を漏らすとは考えにくいです。特に最近は、そうした方面について非常に厳しくなってきていますので「私の夫が宿泊していますよね?」と電話しても、何も教えてくれない可能性が高いです。というのも、あなたがそのお客の妻である証拠もないからですし、また仮にそれが立証できたところで、ホテル側には何のメリットもないからです。

 メールやLINEなどで性的なメッセージをやり取りしているところをゲットできれば、かなり強いですね。「また会おうね」「すごくよかったよ」とか、明らかにそれとわかるようなメッセージを確保できれば有利です。男性の中には、相手の女性の裸体を撮影して、スマホのデータの中に入れっ放しにするような迂闊な人もいますから、そういうデータも忘れずに手に入れておきたいところです。
 ただ、そうしたところがアキレス腱になることは、当の夫自身もよく知っていますから、それなりに警戒しているのが普通です。指紋認証はもちろんのこと、パスコードでの認証もかかっていたります。うっかりロックされていないままに入浴したタイミングなどを逃さず、チェックするようにしましょう。但し、あなたがスマホを調べたという事実は知られてはなりません。どうやってごまかすかも事前に考えておくべきです。
 ロックの解除方法ですが、よくあるのは、夫が酔っ払っていたり、寝ていたりする隙に親指を押し当てるという手段がありますね。
 但し、パスコードのほうまで設定してあった場合は、なかなか大変です。iPhoneの場合は、6桁の数字を入力しなければなりません。旧型でも4桁です。よくあるのが「誰かの誕生日」など、絶対に忘れない数字を使うというやり方です。夫に関係する記念日などを予めリストアップしておいてから試すといいでしょう。

ハグ、キスだけでは不貞行為ではない

 一方、明確さを欠く証拠は、証拠として取り上げてもらえないことに留意してください。

「あの時、道端で夫が女性と抱き合っていた!」

 などと主張しても、これだけでは裁判官は動きません。夫がしらばっくれたら、それで終わりです。
 証拠写真があれば、と思うかもしれませんが、なんと驚きなことに、これでも充分ではないのです。

「ああ、あの時は、田中さん、仕事でひどいミスをしてね。それでものすごく落ち込んでて、俺の前で泣いちゃったんだよ。それでまぁ、仕方なく抱きかかえて宥めてただけなんだ。でも、いやらしいことは何もしなかったし、そのまま家に帰したよ。不倫? とんでもないね」
「あなた、家で問い詰めた時は、浮気したって認めたじゃない!」
「あの時はしょうがなかったんだよ。君がうるさく騒ぐから、一度認めないと話が終わらないな、と思ってしょうがなく頷いただけさ」

 こんな主張が通ってしまうのです。
 つまり、夫に中途半端な証拠を突きつけて、自白を迫ってそれを録音したところで、なお相手には逃げのびる余地があるということです。

 要するに、裁判所が認める「客観的証拠」は、かなり範囲が狭いのです。抱き合った、キスした、というだけでは不貞行為としては充分とはいえません。はっきり「セックスした」といえる状況が必要なのです。

風俗店も不貞行為

 逆に「セックスした」とみなせる状況があると、道義的にはなんら問題とならないようなケースでも、不貞行為と判断してきます。やましいことは何一つしていなくても、一つ屋根の下で夜を明かせば、それが証拠になってしまうのです。
 また例えば、こんなケースでも、慰謝料が発生します。

「以前から、とある女性にお金を払って性欲の処理をお願いしている。その女性に夫がいることは最近知った。金額は彼女が決めている。呼ぶとうちにきて、性欲の処理をしてもらうのだが、いわゆる本番行為はしていない」

 明らかに買春ですが、これでも不貞行為とされてしまうのです。
 極論ですが、夫のいる女性がソープランドで働いている場合も同様です。ソープランドは事実上、売春施設ですが、建前としてはあくまで個室銭湯であり、そこにいる女性は男性客のマッサージをするための要員です。ただ、密室に二人でいるうちに「恋愛感情」が生じて性行為に及ぶだけであって、当局は自由恋愛には関知しないというスタンスなのです。よって女性コンパニオンに夫がいる場合、それは不貞行為とみなせるのです(但し、コンパニオンに夫がいるかどうかを知らない以上、客はコンパニオンの夫から不貞行為で訴えられることはない)。

 言い換えると、夫がソープランドに行った証拠があれば、これも立派な不貞行為です。
 特に夫が個人事業主だったり、過激な営業をする会社員だったりした場合で、節税目的で経費にするために風俗店の領収書を集めていたら、逃さずゲットしておくべきです。風俗遊びは浮気のうちに入らない、なんてのは男の側の都合のいい言い訳に過ぎません。
 一方で、行った風俗がキャバクラやお触りパブ程度だった場合には、不倫の証拠とはいえません。人目のある場所でお酒を飲んで、体の表面にちょっと触れるだけで、性行為には至らないからです。

興信所は安くないので、上手に利用すること

 こういった証拠を集めるのは、簡単ではありません。
 では、とすぐに「興信所を使えば」と考える女性もいますが、ちょっと待ってください。

 もちろん、探偵を使うのも結構ですが、その費用はどうしますか?

 夫がラブホテルに入る瞬間を撮影できれば、確かにそれは浮気の証拠になります。裁判でも慰謝料を取れるでしょう。
 しかし、一方であなたが証拠を得るためにかけた費用は、裁判では取り戻してもらえません。仮にあなたが不倫の慰謝料として三百万円を手に入れても、興信所に四百万円を支払っていたら、赤字になってしまうのです。
 一般に、不貞行為そのものの慰謝料は、そんなに高額にはなりません。これだけで何千万円も取れる、なんてことは、少なくとも一般人の裁判ではあり得ないことです。

 また、この手の証拠集めも簡単ではありません。夫が不倫しているのは確かでも、「いつ」「どこで」相手と関係を持っているかはわからないからです。会社の後輩とラブホテルに行くのはいつでしょうか? 水曜日の夜? 必ず毎週? 場所は大塚? それとも新橋? 二人きりで会ったとしても、オシャレなバーで飲んで、それで散会するかもしれません。そうなったら、張り込んだ分だけ人件費がかかって終わりです。
 いざ、写真を撮るといっても簡単ではありません。夜、仮に夫が他の女とラブホテルに入ったところを捉えたとしても、本人とわかる写真になるかどうかはわかりません。撮影する角度のせいで顔がハッキリ映らなかったり、周囲が暗いせいで写真が不明瞭だったりと、しくじる要因はいくらでもあります。
 効率を考えずに24時間、夫を見張り続けたら、正直いくらお金があっても足りないのです。

 私、蓮沼としては、それでも気持ちの上で、夫への「復讐」のために、なんとしても不貞行為を証明したいという感情は理解できますが……

 夫のことをよく知っているのは、妻であるあなたです。
 まず重要なのは、良質な興信所を使うということ。それと証拠集めは興信所に「任せる」のではなく、利用するにせよ、あくまで「最後の詰め」に使うのだという意識で臨みましょう。

AMUSE(アムス)

 ちゃんとしたプロの興信所なら、まず無料相談を受け付けて、それから案件を引き受けるか決めてくれます。
 上にあげたのはAMUSEという浮気調査の専門興信所ですが、いきなりお金を取られることもなく、話を聞いてもらえます。

不完全な状況証拠も捨てないで

 では、仮に証拠を手にできなかったら、離婚はできないのでしょうか?
 いいえ、そんなことはありません。

 例えば、夫が誰か他の女性と「愛の交換日記」を続けているとしましょう。
 そこには「本当に愛しているのは君だけだ」などと書き連ねてあります。しかし、夫がその女性と外泊したりといった証拠は一切ありません。具体的な性行為に及んでいないのだから、これは裁判所が認めるところの不貞行為とはいえません。

 しかし、なんでも物事には程度というものがあります。
 例えば、毎日のように夫の「恋人」がうちに上がりこんで、妻の目の前で肩を抱いた状態でテレビを見ていたら、どうでしょうか? もちろん、家に泊まることはなく、性行為をするでもなく、その女性は帰宅するものとします。
 性交渉がないから不貞ではないにせよ、これで妻が傷つかないはずはありません。こういう広い意味での貞節でない行為が繰り返されている場合には、民放七七○条一項五号の「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するとして、離婚が認められます。

有責主義 vs 破綻主義

 これは、過去に不貞を許した場合にも使える材料です。

 例えば、以前に夫が不貞行為を働いており、その事実がありながら、あなたが婚姻を継続したとします。もちろん、有責配偶者なのは夫で、あなたは何も悪くないのですから、これはあなたの権利です。
 しかし、ではこの数年後、やっぱり夫の浮気の事実がつらいから、という理由で離婚を訴え出たら、それは通用するのでしょうか?

「終わった話じゃないか」
「僕は謝った。君は一度、許すと言ったじゃないか」

 しかし、裁判所は責任の有無も判定しますが、家庭生活が破綻しているかどうかも同じくらい重要視します。

 いわゆる「有責主義」「破綻主義」です。
 不貞行為などの責任を問われる行動を取った場合、これが原因で離婚を成立させることができます。
 と同時に、どちらに責任があるかということとは別に、きっかけはどうあれ、現在は家庭生活が維持できない状況になっている場合、やはりこれで離婚が成立します。

 例えば、妻の側が不倫をしたとします。
 夫は一度は許して和解に至ったのですが、実のところ、それを根に持って後からネチネチと文句を言い続けました。その場合に、妻から離婚したいと申し出たケースの判例があるのですが、これは妻の言い分が通りました。
 妻が不貞行為に至ったこと自体はよくないとしても、それはもう終わったことです。しかし、それを理由に夫が家庭を破綻させている以上、妻は離婚を申し出る権利を持つのです。

 もう一つ、有責配偶者の側が離婚を勝ち取った例を挙げます。
 昭和初期に結婚した男女がいたのですが、妻に子供が生まれませんでした。それで男は他所に愛人を作り、子供を得ました。愛人に乗り換えたくなった男は、裁判所に離婚を要求し、却下されました。浮気した側から離婚したいなどまかりならん、妻が同意しない限り許されない、ということです。
 しかし、判決の後、三十年以上経ってから、もう一度夫が離婚を申し出たところ、今度は要求が通ってしまったのです。彼が有責配偶者である事実は変わりませんが、三十年間ずっと別居しており、夫婦生活の実態がなく、家庭は破綻していたからです。
 但し、このケースでは、元夫は元妻が生活に困窮しないようにする義務を負います。

 つまり、慰謝料なしでもいいから離婚したいということなら、家庭を破綻させればいいことになります。
 その、最もシンプルな方法が別居ということなのです。これはこれで別個に研究するべき項目なので、他でまた説明します。

もし、あなたに秘密の恋人がいたら

 このように見ていくと、逆にあなたが家庭外に恋人をもっている場合に、どうしたらいいかも見えてきますね。

 まず、夫には恋人の存在を知らせてはなりません。疑われないよう、痕跡を残さないように注意すべきです。携帯電話を盗み見られないようにするのはもちろんのこと、見せまいとしている仕草すら見せてはなりません。恋人の写真をスマホに保存しておくなんて、愚の骨頂ですが、それだけでなく、二人で遠出したからといって風景だけの写真を撮ったりというのも、アリバイ工作ができないなら、控えたほうが無難です。女友達と行ったと言っても信じてもらえないような場所だったりすることもあるからです。

 その上で、その恋人と結婚するつもりがあるのか、ないのかを考えます。
 なければ、秘密を隠し通すだけでいいです。といっても、恋人の方が逆上せ上がってあなたの夫に挑戦するようになったらまずいので、手綱はしっかり握っておいてください。
 夫を取り替えるつもりなら、このサイトの他の記事も確認して、うまく今の夫を切り捨てる方法を見つけてください。

離婚の原因:別居、失踪

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