離婚の準備:育児の労力

離婚の戦略

 子供がいない状態で離婚する場合、またはいても既に独立している場合には、女性は非常に身軽です。収入のアテさえあれば、あとはいくらでも一人暮らしが可能です。
 また、独立はしていないにせよ、子供の年齢がある程度高く、それなりの行動力を有している場合でも、母親の負担はそこまで大きくはなりません。つまり、高校生の息子とか、中学生の娘であれば、多少の家事をやっておいてもらうことも期待できますし、いちいち見張っていなくても、そう変なことはしません。グレたりしていなければ、ですが。

 深刻なのは、まだ幼い子供がいる場合です。
 乳幼児がいる状況で離婚すると、その負担は計り知れません。

 ……が、現実には、乳幼児がいる夫婦の離婚は、決して少なくはない、いえ、多数派であるとさえ言えます。
 今の時代、離婚の6割は、結婚後5年以内といいます。とすると、結婚直後に子供が生まれたとしても、まだ小学生にすらなっていません。そして、10歳未満の子供の親権は、特別な事情がない限り、普通は母親にいきます。

 つまり、現代における離婚とは、育児負担にどう対処するかという問題でもあるのです。

実家は頼りになるか

 まず、もっともオーソドックスな対応方法から。
 実家に頼る。これです。

 もし、あなたの離婚原因の中に自分の非がなく、純粋に被害者といえる状況であるなら、この手を使わない選択肢は考えにくいでしょう。
 実家に助けを求める場合、住居その他の生活の手段が一通り揃っているという大きなメリットがあります。ましてや一軒家がちゃんとある家庭だったとすれば、あなたをはじめ、既に独立した子供達の個室だった場所も残っていたりするので、スペースが足りなくなる心配もありません。こういう頼れる場所がない女性は、まず住居を確保するという難題から取り組まねばならないのです(離婚戦術についてのところで説明します)。
 また、あなたの母親は育児経験者でもあり、乳幼児を任せる上でも心強い存在です。

 但し、問題点やデメリットもあります。

 まず、実家が必ずしもあなたの味方をしてくれるとは限りません。私、蓮沼の知人女性でも、夫の暴力に耐えかねて実家に逃げ込んだのに「出戻り」などと言われて、居場所がなかったという人がいます。昔の考え方をしている人に多い態度ですが、それだけでなく、そもそも離婚しやすい家庭から離婚しやすい子供が生まれるという連鎖もあるので、ひどい夫に出会う女性の実家が温かな家庭であるケースはそんなに多くないのです。
 それから、あなたの子供が乳幼児一人だけとは限りません。年嵩の子供を連れていた場合は、どうなるでしょうか? そして、あなたの嫁ぎ先は東京でも、実家は大阪かもしれません。すると、年嵩の子は小学校に通えなくなります。もし転居ということになれば、親の都合でお友達ともお別れしなくてはいけません。ただでさえ両親の離婚騒動は子供の心に傷をつけるのに、そのダメージが更に大きくなってしまうのです。
 もう一つ。これは夫が暴力を振るうなど、危険な離婚案件の場合に特に気をつけるべきポイントですが、夫はあなたの実家の場所を把握していることを思い出してください。そうなると、逃げ込んだ先まで追いかけてきて、あなたの家族もろともメチャクチャにしていくかもしれません。或いは、あなたの不在を見計らって子供を連れ去るとか、そういう行動に踏み切る危険性もあります。夫の追跡をどう振り切るかも、計算に入れておくべきです。

 そういった問題点を踏まえた上で、なお実家に頼るかどうかを判断してください。

一番大変な時期を乗り切る

 育児の負担が決定的に大きいのは、とにかく乳幼児の時期です。ここを乗り切ってしまえば、あとは負担は加速度的に小さくなっていきます。もちろん、子供は多少大きくなっても聞き分けのないものですが、無条件にあらゆるケアを必要とする乳幼児期と違って「目を離したら死んでいた」という可能性は、やや低くなります。動ける分だけ、交通事故その他の心配は増えますが……
 よって、その困難かつ重要な一時期を乗り切ってから、ちゃんと離婚するという段階的な作戦を考えることもできます。

 離婚ではなく、別居から始めるという方法もあります。
 特に、離婚の原因を「有責」でなく「破綻」で作り出したい場合にも、別居は有効な手段です。相手に目に見える瑕疵がある場合はそんなことをしなくてもいいのですが、さもなければ「性格の不一致による別居、破綻」を演出しなければなりません。

 で、離婚を遅らせることに何のメリットがあるかですが……

 別居しているから家庭は破綻しつつあります。しかし、婚姻は継続しています。そしてあなたは、育児という大切な仕事を引き受けたままです。
 よって夫は「婚姻費用」を負担しなければなりません

 実は、正式に離婚してしまうと、なるほど夫には養育費その他の支払い義務はあるのですが、あなたの生活については一切の責任を負わずに済むようになります。だから、夫から少しでも多くの生活費を得たいというような場合には、特に子供が幼く、外で働くのが難しい状況においては、あえて別居にとどめ、婚姻費用を引っ張り出したほうが得することもあるのです。
 私、蓮沼の知りあいの女性でも、弁護士に勧められてこの作戦を実行している人がいます。

 ただ、当然ながらあなたが新たに住居を借りて生活するわけですし、その分余計にコストがかかるので、生活水準はいくぶん、損なわれると覚悟してください。

 →婚姻費用の詳細は、こちら

育児のアウトソーシング

 労力をアウトソーシングする作戦もあります。
 シッターさんを呼んだり、保育園に預けたりするなどです。

 しかし、これは安くありません。
 ベビーシッターだと、時給1000~2000円弱を取られます。しかも、生まれた直後の子供を預かってくれる人は、さすがにほとんどいません。生後一年とか、早くても半年とか、それくらいからがスタートラインです。
 いずれにせよ、これだけの時給を支払い続けるためには、あなたの収入水準がもっと高くないといけません。つまり、時給3000円くらいは稼げないと、働いた分がそのままシッターさんに右から左なので、預ける意味がないのです。

 その点、保育園はまだマシです。
 月額保育料はあなたの世帯の収入水準で決まります。生活保護世帯であれば負担はゼロですし、一番保育料が高い0歳児の保育で、あなたの収入が最高ランクの場合でも、月額で7万円程度で済みます。
 問題は、空きがあるかどうかですが……ないから、ネット上でベビーシッターさんが大量に職探しをしているし、またそれで収入を得ることもできているのです。

 シングルマザーとなれば、保育園に入る審査はかなり有利になるはずです。
 頑張ってみてください。

 離婚時期が出産から2~3年以内だったりすると、まだまだ子供の世話が大変で、まるで余裕のない状況に置かれます。一時的には貧困ラインの生活を送ることも覚悟しなければなりません。
 生活保護などを受けることも検討しながら、なんとか気力、体力の回復を図り、再起のための準備をする余裕を作り出しましょう。

離婚の準備:心の健康

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