夫が嫌いになる理由

管理人のコラム

夫が嫌い」

 こんな声が、あちこちから聞こえてきます。
 インターネットが一般に普及する前であれば、それも主婦同士の井戸端会議の中でとどまっていたことでしょう。しかし、情報技術の発達に伴って、日本全国津々浦々、誰の声であっても行き届くようになってしまった今では、どうやら日本中の女性がみんな同じことを思っているのが明らかになってしまいました。

 しかし、不思議なものです。
 なぜ「夫が嫌い」になってしまったのでしょうか。昔と違って、お見合い結婚を親族から強制されたという人は、そんなにはいないはずです。つまり、初めからイヤでイヤで仕方ない相手と無理やり結婚したわけではないのです。自分で選んだはずのパートナーなのに、どうしてそんなにも嫌いになってしまうのでしょうか。

「見る目がなかったせいだ」
「今の女は我慢を知らない」
「自己責任」

 そんな心無い言葉も、あちこちに散見されます。
 これは事実なのでしょうか?

確信犯な男達

 まず、確かに明確な見込み違いということは、昔から少なからずありました。
 結婚する前は紳士、した後は亭主関白の内弁慶。家にお金も入れてくれず、暴力は振るう、飲む打つ買うと男の娯楽を満喫する、家事はおろか、子供の遊び相手にすらなってくれない……

 いつの時代にもいますが、なんといってもこうした本性を発揮しだすのは、結婚して落ち着いてからだったりするので、交際期間中に見抜くのは、なかなか難しかったりします。
 だらしない部分が最初から外に見えていれば問題ないのですが、特にこの手の男の中でも悪質な部類は、それとわかっていて表面を取り繕うのが上手だったりします。しかし、内心では明確かつ激しい女性差別の意識があるのです。
 実際、私、蓮沼が見聞きした中でも、こんな風に言い放つ男がいました。

「だって女だぜ?」

 つまり、女性の言葉を真に受けたり、意見や立場を尊重してやるのか、男と同じように扱うのか? そんなのバカらしいだろ? と言われたことがあるのです。
 それでいて、彼は表面的にはモテました。実のところ、とっかえひっかえであちこちに性病を感染させてまわるような外道でしたが、なにしろ、ある意味、この道の「プロ」ですから、パッと見ただけでは彼の危険性には誰も気付けないのです。

 ですが、これを見抜けというのも、酷な話です。
 あなたは詐欺師を一瞬で見抜けますか、ということなのですから。あなたは嘘の専門家ではありませんが、詐欺師はそれを生業にしているのです。

一般的な「夫嫌い」

 しかし、そこまでの「プロ」でもない男でも、妻からみると耐え難いこともあります。
 浮気をしたわけでもなく、暴力を振るうでもなく、ギャンブルやスマホゲームに大金を遣うわけでもないのですが、なんとなく嫌いになってしまうのです。そして、今の時代では、こちらのケースのほうが圧倒的に多いのではないかと思います。

 それで、現実に女性の声を聞いてみると……

「稼ぎが少ない」
「家事をしない」
「子供の相手をしない」

 という、割とすぐに理解できるような理由もあれば、

「男のくせに度胸がない、決断力がない」
「振る舞いがだらしない、かっこ悪い」
「臭い」

 といった、なんとリアクションしていいかわからないようなものまで、いろいろです。
 だってそれは、毎日デートの時みたいに身だしなみに気をつける余裕なんてないし、加齢臭なんてどうしようもないだろう、という世の男達の悲鳴が聞こえてきそうです。

 では、前者はまともな理由で、後者はただのいいがかり、ワガママなのでしょうか?

 これは私の個人的な意見で、別に何かの学説とか、根拠があるわけではないのですが……
 妻が「夫が嫌い」と感じるのは「自然現象」であるというのが、持論です。

嫌いなのは、釣り合いが取れていないから

 わかりやすく言うと、「釣り合いが取れていない」から、というだけのことだと思うのです。

 皆さんがスーパーなりコンビニなりに出かけて、お買い物をするとします。
 そこで百円の板チョコを買うとしたら、特に何も感じるところはないと思います。細かいことをいえば、スーパーでは数十円で、コンビニでは百円を超えることが多いですが、その辺はとりあえずおいておくとして。だいたいそれくらいが相場だと認識しているから、嬉しくもなければ不快でもないのです。
 ところが今日、また板チョコを買おうとスーパーに行ったら、なんと「千円」の値札がついていたとします。

「なにこれ! たっか!?」

 とんでもない値段がついているので、あなたは買う気をなくしてしまいます。
 驚いて、店員に詰め寄るかもしれません。どうしてこんな値段にしたのか、と。でも、店員はクラゲのように体を揺らしながら「これからそういう値段でやっていきますので」と言うばかり。納得できる理由が一つも出てこないのです。これではどうしようもありません。

 なんなんだ、このお店は。
 二度と利用するもんか。

 そう思ってもおかしくないでしょう。
 これと同じことが、結婚でも起きている、というのが私の考えです。

爪先立ちする男達

 よく思い出してみてください。
 あなたが夫との結婚を決断した瞬間は、どのようなものだったでしょうか?

「埠頭の夜、遠くにポツポツと色とりどりの照明が見える中、汗ばむほどでもないほどよい夜の空気に心地よく歩みを進める中、ビシッとスーツを着こなした彼が、『僕と結婚してください』とプロポーズしてきた」

 ……ここまでキレイに形になっているかどうかは人それぞれですが、似たようなシチュエーションがあったのではないかと思います。

 何が言いたいかというと、この瞬間の「夫」は、いわば「最高点」に達していた、ということです。
 あなたのために高級レストランのディナーを予約し、あなたのために高級ホテルのラウンジでカクテルを飲み、あなたのために身だしなみを整え……
 他にも仕事や収入の問題もクリアし、思いが至ればですが自分の家族のややこしい問題……親との同居を強要せず、二人で暮らせるマンションでの生活を予定していたり、或いはあなたの負担を減らすべく料理を覚えてみようとしていたり。

 要するに、大学受験と同じで、この瞬間に最高の点数をとるべく何もかもを整えた、ということです。
 そして、あなたはその点数を評価して、基準ラインを満たしていると判断したから、了承を与えたのです。

  • 見た目はまぁ、すごくイケメンではないけど、ここまで身なりを整えられるなら……
  • 真面目に仕事はしているようだし、今後とも手堅い職業だから、稼ぎには困らないだろう
  • この前振舞ってくれたパスタはノビノビでおいしくなかったけど、今後とも努力するなら、大目に見ようか
  • とりあえず長男じゃないし、親と同居しないで済むみたいだし、そこもクリア

 こうして合格ラインを越えたから、彼らは晴れて夫になることができたのです。
 しかし……

 彼らは「受験生」ですから、無事、大学に入学すると、中身を全部忘れてしまいます!
 試しに大学二年生になりたての若者を捕まえて、一年前の試験をもう一度やらせたら、どうなるでしょうか? きっと目も当てられない結果になるでしょう。

 要するに、男達は爪先立ちをしていただけなのです。
 しかし、ではどうしてそんなことになってしまうのでしょうか?

普通の男では、普通の女を贖えない

 ズバリ結論を述べてしまいましょう。
 それは、

「最初から、価値が釣り合っていないから」

 これに尽きます。

 どういうこと? と思うかもしれません。
 いろいろ見てきた私の意見としては、

「最初から女性の方が圧倒的に価値が高く、普通の男性では普通の女性とは釣りあわない」

 としか説明ができないのです。
 その証拠に、早くから一夫一婦制がキリスト教によって普及したヨーロッパ地域を除くと、世界のほぼ全域で、一夫多妻制が存在しました。裕福な男性と、そうでない男性とが存在した世界では、女性は裕福な男性に集まったのです。
 この傾向は、実はかなり大昔からあったようです。

 新石器時代に生殖できた男性は「極度に少なかった」

「これまでに明らかになっていなかったボトルネック効果がある。それは、約8,000年前に『男系の遺伝的多様性』に生じたものだ」
「この時期に生殖を行った女性17人に対して、自身のDNAを伝えることができた男性はたったの1人だった」

 よく言われるように、男は生殖にかかるコストは小さいけれども、女性は妊娠・出産と長い期間、大きな負担を背負うことになるので、相手を厳選しなければなりません。その分、男性は激しい競争を勝ち抜かなくてはならないのです。
 その自然淘汰の割合が、この記事にみるところの1/17ということなのです。

 つまり、あなたが自然な感情のままに「自分と釣り合う相手」と心の中で描く対象は、同じ学級の中の一番のイケメンである、とするのが当然ということなのです。
 普通の男と普通の女、だから釣り合う、というのは、だから、ちょっとした詭弁です。集団で一番の男と、普通の女性が、やっと対等なのです。少なくとも、女性の本能からすれば、最初からそういうようにできているのです。
 特に今の時代は、情報過多でもありますから、いくらでも素晴らしい男性が他にいるのがわかってしまっています。現代の女性の自然な感覚でいえば、1/17どころでなく、それこそ百人に一人、千人に一人の男性でなければ、女性とは釣り合わないと感じても、おかしくはありません。

 しかし、これでは男性はたまったものではありません。
 そこで歴史上のある時点から一致団結して対応するようになりました。それが結婚制度です。

 エンゲルスは「結婚は女性の世界史的勝利」だと述べました。
 これに対して上野千鶴子は「男性の勝利」と反論しました。

 家制度を設け、或いは宗教で束縛し、あれこれ囲い込んだ上で男の側も必死で背伸びして、やっと成り立っていたのが結婚なのです。その分女性はずっと我慢してきたともいえるでしょう。
 してみれば、「夫が嫌い」なのは当然、ということになります。あなたという、例えば千円の価値のあるものを、たった百円分の板チョコでちょろまかそうとしているのですから。

平等な世界とは、男性が女性に奉仕する世界

 この辺の問題が解決するのは、ずっと先でしょう。
 つまり、結婚しなければいけないという強制が完全に外れる、ということです。

 結婚しないで出産すると「未婚の母」で体裁が悪いとか、一人で子供を養って生きるのは大変だとか、そうした諸々の問題が完全に解消されない限り、女性は我慢を強いられ続けるのです。

 そうした試みの一つを紹介しましょう。
 フランスでは、シラク三原則というものがあります。

  • 子どもを持っても新たな経済的負担が生じない
  • 無料の保育所を完備
  • 育児休暇から女性が職場復帰する際、勤続していたものとみなして企業は受け入れる

 出産するのに結婚は必須ではないし、出産しても育児コストを問題にしないで済む、ということです。
 ただ、これでも手ぬるいでしょう。いっそ、すべての女性にベーシックインカムを保障して、いつでも生活の心配がない状態にした上で、希望者が希望するタイミングでいくらでも出産できるようにするべきです。もちろん、出産を希望しないのなら、それも自由です。
 そのための費用は、男性が稼げばいいのです。女性から選ばれない男性も、そうやって社会に貢献することで、なんとかこの世に存在する価値が残るのですから。

 でも、そう言うと……

「なんで俺の子供でもないのに、俺が働いてカネを出さなきゃいけないんだ」

 などと言い出す男もいます。
 問題外ですね。

 既にして出産を前提とした体を持って生まれてきた女性は、最初から公益的、社会貢献的な存在です。
 それに対して、こうした男達のなんと利己的なことでしょうか。

「だったら絶対に産むんだな?」

 これも論外です。
 産む、産まないは女性の自由です。強制されるものではありません。
 産みたくなる環境、条件を満たすのは、男の役目です。

 私の知人女性ですが、こんな離婚危機を迎えたことがありました。
 彼女の夫は経済的に非常に裕福で、しかも帰宅後には残った時間はすべて育児などに使う男性でした。唯一のワガママがあるとすれば、週に一度のフットサルくらいなものだったのです。しかし、彼女は職場で魅力的(に見える)な男性に出会ってしまい、道ならぬ恋に走ってしまいました。
 そんなことをする前に私に一言相談してもらえれば、と思うのですが、彼女は率直に夫に向かって不倫の事実を告げ、離婚を申し出ました(一番やっちゃいけないやり方です)。すると彼は、怒るでもなく、嘆き悲しむでもなく、淡々と相手の男性との面接を行いました。彼曰く

「妻を任せるに足る男かどうかを見極めるため」

 だったそうです。
 そして、別れるであろう妻には、最後だからと覚悟を決めて、非常に高価なプレゼントも贈りました。
 結局、その魅力的に見えた男は、実は性質の悪いナンパ師で、風俗遊びが趣味の不潔な人物だったことが明らかになりました。それで彼女はその男との交際をやめたのですが、夫はそんな彼女に文句一つ言わず、受け入れたそうです。
 彼女が特別美人だったとか、そういうことはありません。ごく普通の女性です。特別な価値があったから、大切にされたわけではないのです。
 そうではなく本来女性と釣りあう男というのは、ここまでするのが当然ということなのです。

 この世に存在する人間は、すべて女性から産まれています。
 要するに男がこの世界に存在することをかろうじて許されているのは女性のおかげなのです。

 身の程を弁えてほしいところですね。

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